百衲本二十四史序

台灣商務印書館 臺四版重印補校百衲本二十四史序


〈原文〉

百衲本者何?彙集諸種善本,有闕卷闕頁,復多方蒐求,以事配補,有如僧衣之補綴多處者也。

我國正史彙刻之存於今者,有汲古閣之十七史,有南北監之二十一史。清高宗初立,成明史,命武英殿開雕,至四年竣工;繼之者二十一史。其後又詔增劉昫唐書,與歐宋新唐書並行,越七年遂成武英殿二十三史。及四庫開館,諸臣復據永樂大典及太平御覽,册府元龜等書,裒輯薛居正舊五代史,得旨刊布,以四十九年奏進;於是二十四史之名以立。

武英殿本以監本爲依據。清高宗製序,雖有監本殘闕,併勅校讎之言,始意未嘗不思成一善本也。惟在事諸臣,既未能廣蒐善本,復不知愼加校勘,佚者未補,譌者未正,甚或彌縫缺乏,以譌亂眞,誠可惜也。

本館前輩張菊生先生,以多年之時力,廣集佳槧,審愼校讎,自民十九年開始景印,迄二十六年甫竟全功。雖中經一二八之劫,抱書而走,亂定掇拾需時,然景印之初,海宇清寧,亦緣校讎精審,多費時日。嘗聞菊老葺印初稿,悉經手勘,朱墨爛然,盈闌溢幅,點畫纖細,鉤勒不遺,與同人共成校勘記,多至百數十册,文字繁冗,尚待董理。爰取原稿若干條,集爲校史隨筆,而付梓焉。

就隨筆所記,殿本訛闕殊多。分史言之,則史記正義多遺漏,漢書正文注文均有錯簡,三國志卷第淆亂,宋書誤註爲正文,南齊書地名脫誤,北齊書增補字句均據北史,而仍與北史有異同。魏書考證有誤,舊唐書有闕文,訂正錯簡亦有小誤,唐書有衍文,舊五代史遜於嘉業堂劉氏刊本,元史有衍文及闕文,且多錯簡,重出之傳,亦未刪盡。綜此諸失,殿本二十四史不如衲史遠矣,況善本精美,古香古色,尤非殿本所能望其項背。

茲將百衲本二十四史據以景印之版本列述於後・・

史記  宋慶元黃善夫刊本。
漢書  北宋景祐刊本,瞿氏鐵琴銅劍樓藏。
後漢書  宋紹興刊本,原闕五卷半,以北平國立圖書館元覆宋本配補。
三國志  宋紹熙刊本,日本帝室圖書寮藏,原闕魏志三卷,以涵芬樓藏宋紹興刊本配補。
晉書  宋本,海寧蔣氏衍芬草堂藏,原闕載記三十卷,以江蘇省立圖書館藏宋本配補。
宋書  宋蜀大字本,北平國立圖書館吳興劉氏嘉業堂藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
南齊書  宋蜀大字本,江安傅氏雙鑑樓藏。
梁書  宋蜀大字本,北平國立圖書館及日本靜嘉堂文庫藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
陳書  宋蜀大字本,北平國立圖書館及日本靜嘉堂文庫藏。
魏書  宋蜀大字本,北平國立圖書館江安傅氏雙鑑樓吳興劉氏嘉業堂及涵芬樓藏。
北齊書  宋蜀大字本,北平國立圖書館藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
周書  宋蜀大字本,吳縣潘氏范硯樓及自藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
隋書  元大德刊本,闕卷以北平國立圖書館江蘇省立圖書館藏本配補。
南史  元大德刊本,北平國立圖書館及自藏。
北史  元大德刊本,北平國立圖書館及自藏。
舊唐書  宋紹興刊本,常熟鐵琴銅劍樓藏,闕卷以明聞人銓覆宋本配補。
新唐書  北宋嘉祐刊本,日本岩崎氏靜嘉堂文庫藏,闕卷以北平國立圖書館江安傅氏雙鑑樓藏宋本配補。
舊五代史  原輯永樂大典有注本,吳興劉氏嘉業堂刻。
五代史記  宋慶元刊本,江安傅氏雙鑑樓藏。
宋史  元至正刊本,北平國立圖書館藏,闕卷以明成化刊本配補。
遼史  元至正刊本。
金史  元至正刊本,北平國立圖書館藏,闕卷以涵芬樓藏元覆本配補。
元史  明洪武刊本,北平國立圖書館及自藏。
明史   清乾隆武英殿原刊本,附王頌蔚編集考證攟逸。

上開版本之搜求補綴,在彼時實已盡最大之能事。惟今者善本時有發見,前此認爲業已失傳者,漸集於一隅,尤以中央圖書館及故宮博物院在抗戰期內,故家遺族,前此秘藏不宣,因播遷而割愛者不在少數;盡量收購,寄存盟邦,以策安全。近年悉數運回,使臺灣成爲善本之總滙。百衲本後漢書原據本館前涵芬樓所藏宋紹興本影印,益以北平圖書館及日本靜嘉堂文庫殘本之配備,當時堪稱人間瑰寶;且志在存眞,對其中未盡完善之處一仍其舊。然故宮博物院近藏宋福唐郡庠覆景祐監刊元代修補本及中央圖書館所藏錢大昕手跋北宋刊本與宋慶元間建安劉元起刊本,各有其長處。本館總編輯楊樹人教授特據以覆校百衲本原刊,計修正原影本因配補殘本而致首尾不貫者五處,其中重複者四處,共圈刪衍文四十二字,補足脫漏一處,缺文二字,原板存留墨丁四十五處,補正五十二字。另有顯屬雕刻錯誤者若干字,亦酌爲改正,詳見附表,以備査考。於是宋刊原面目,大致可復舊觀矣。又前漢書原景本闕漏目錄全份,亦據故宮博物院珍藏宋福唐郡庠覆景祐監刊元代修補本補印十有四頁,以成全璧。校書如掃落葉,愈掃愈落,礙難悉數掃清,然多費一番心力,對於鑽研史籍者,定可多一番裨益。今後仍當本此精神,毎次重版,盡量發掘善本,加以校補、區區之意,當爲讀者所樂聞,亦可稍慰本館前輩張菊老在天之靈,喜其繼起有人也。

本館衲史原以三十二開本連史紙印製,訂爲八百二十册,流行雖廣,以中經多難,存者無多,臺省尤感缺乏,各國亦多訪購,爰應各方之需求,改訂爲十六開大本,縮印二頁爲一面,字體較縮本四部叢刊初編爲大,用上等印書紙精印精裝,訂爲四十一鉅册,以便檢閱,經重版數次。茲爲謀普及,再縮印為二十四開本五十八册,字體仍甚清晰,而售價不及原印十六開本之半,莘莘學子,多有購置之力,誠不負普及之名矣。付印有日,謹述概要。
中華民國六十五年雙十節王雲五識


〈修補〉

「豆辯  介紹兩套史書:台灣商務《百衲本二十四史》和成文的《仁壽本二十六史》」より引用
https://www.douban.com/note/431449992/

上記サイトと百衲本二十四史『史記』「臺四版重印補校百衲本二十四史序」との相違する諸点について、以下の通り修補。

併・校讎之言→併勅校讎之言
・者未正→譌者未正
以・亂真→以譌亂真
考證?逸→考證攟逸。攟は捃(拾う)の別体
善本之總匯→善本之總滙
殘本之配備→殘本之配補
共圈刪衍文三十六字→共圈刪衍文四十二字
墨丁四十六處→墨丁四十五處
亦酌爲改正の後に「詳見附表,以備査考」を補
定可多一番裨益の後に「今後仍當本此精神,毎次重版,盡量發掘善本,加以校補」を補


〈読み下し〉

百衲本とは何か?諸種の善本を彙集(いしゅう)*し,闕卷闕頁有らば,復(また)多方に蒐求(しゅうきゅう)*し,以て配補に事(つと)めるは,僧衣の補綴の多處なる如きもの有る也。

我が國正史は彙刻(いこく)*の今に存するは,汲古閣の十七史有り,南北監の二十一史有り。清の高宗初めて立ちて,『明史』の成るや,武英殿に開雕(かいちょう)*を命じ,四年に至りて竣工す;之を繼ぐは二十一史なり。其の後又詔して增すこと劉昫の『唐書』と,歐宋の『新唐書』とを與(とも)に並行し,七年を越して遂に武英殿二十三史を成す。四庫の開館に及ぶや,諸臣は復(また)『永樂大典』及び『太平御覽』,『册府元龜』等の書に據(よ)り,薛居正の『舊五代史』を裒輯(ホウシュウ)*し,旨*を得て刊布(かんぷ)*し,四十九年を以て奏進(そうしん)*す;是に於て二十四史の名は以て立つ。

武英殿本は監本を以て依據と爲す。清の高宗は序を製(つく)り,監本は殘闕有ると雖(いへど)も,併(あは)せて校讎の言を勅し,始め意(おも)ふは未(いま)だ嘗(かつ)て一の善本も成すと思はざる也。惟(おも)ふに在事(ざいじ)*の諸臣は,既に未だ善本を廣蒐する能(あた)はず,復(また)愼みて校勘を加へるを知らず,佚(うしなは)れしを未だ補はず,譌(あやまり)を未だ正さず,甚しきは或ひは缺乏を彌縫し,以て譌亂の眞(まこと)なるは,誠に惜しむ可き也。

本館の前輩(ぜんぱい)*である張菊生(張元済)先生は,多年の時力を以て,廣く佳槧(かざん)*を集め,審愼校讎し,民十九年自(よ)り景印(えいいん)*を開始,二十六年迄に甫竟(ほきょう)*せしは全功(ぜんこう)*なり。一二八の劫*を經(ふ)る中(あいだ)と雖(いへど)も,書を抱へて走り,亂定まりて掇拾(てっしゅう)*するの時を需(待)ち,然(しか)るに景印の初,海宇(かいう)*は清寧(せいねい)*にして,亦(また)校讎精審に緣(よ)りて,多く時日を費す。嘗(かつ)て聞くに菊老(張元済)の初稿を葺印(しゅういん)*せしは,悉(ことごと)く手勘を經(へ),朱墨は爛然(らんぜん)*,盈闌(えいらん)*溢幅(いっぷく)*し,點畫(てんかく)*は纖細にして,鉤勒(こうろく)*を遺(わす)れず,同人と校勘記を共成せしは,多きこと百數十册に至るも,文字は繁冗(はんじょう)*にして,尚(なほ)董理(とうり)*を待つ。爰(ここ)に原稿の若干條を取り,集めて『校史隨筆』と爲し,而して梓(し)*に付せむ。

『(校史)隨筆』の記する所に就(つ)きては,殿本の訛闕は殊(こと)に多し。史を分けて之を言はば,則(すなは)ち『史記正義』は遺漏多く,『漢書』正文(せいぶん)*は注文均しく錯簡(さっかん)*有り,『三國志』の卷第は淆亂(こうらん)*し,『宋書』は誤って註を正文と爲し,『南齊書』は地名を脫誤し,『北齊書』は字句を均しく『北史』に據(よ)って增補し,而るに仍(なほ)『北史』と異同有り。『魏書』は考證に誤有り,『舊唐書』は闕文有りて,錯簡を訂正するも亦(また)小(すこ)しの誤有り,『唐書』は衍文(えんぶん)*有り,『舊五代史』は嘉業堂劉氏刊本に遜(ゆず)り,『元史』には衍文及び闕文有りて,且(か)つ錯簡多く,重出の傳,亦(また)未(いま)だ刪盡(さんじん)*せず。此(か)く諸失を綜(す)べるに,殿本二十四史の衲史*に如(しか)らざること遠く,況(いは)んや善本にして精美,古香古色にして,尤(もっと)も殿本の能く其の項背(こうはい)*を望む所に非(あら)ざるなり。

茲(ここ)に將(まさ)に百衲本二十四史は據(よ)るに景印の版本を以てすることを後に列述せんとす

史記  宋慶元黃善夫刊本。
漢書  北宋景祐刊本,瞿氏鐵琴銅劍樓藏。
後漢書  宋紹興刊本,原闕五卷半,以北平國立圖書館元覆宋本配補。
三國志  宋紹熙刊本,日本帝室圖書寮藏,原闕魏志三卷,以涵芬樓藏宋紹興刊本配補。
晉書  宋本,海寧蔣氏衍芬草堂藏,原闕載記三十卷,以江蘇省立圖書館藏宋本配補。
宋書  宋蜀大字本,北平國立圖書館吳興劉氏嘉業堂藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
南齊書  宋蜀大字本,江安傅氏雙鑑樓藏。
梁書  宋蜀大字本,北平國立圖書館及日本靜嘉堂文庫藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
陳書  宋蜀大字本,北平國立圖書館及日本靜嘉堂文庫藏。
魏書  宋蜀大字本,北平國立圖書館江安傅氏雙鑑樓吳興劉氏嘉業堂及涵芬樓藏。
北齊書  宋蜀大字本,北平國立圖書館藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
周書  宋蜀大字本,吳縣潘氏范硯樓及自藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
隋書  元大德刊本,闕卷以北平國立圖書館江蘇省立圖書館藏本配補。
南史  元大德刊本,北平國立圖書館及自藏。
北史  元大德刊本,北平國立圖書館及自藏。
舊唐書  宋紹興刊本,常熟鐵琴銅劍樓藏,闕卷以明聞人銓覆宋本配補。
新唐書  北宋嘉祐刊本,日本岩崎氏靜嘉堂文庫藏,闕卷以北平國立圖書館江安傅氏雙鑑樓藏宋本配補。
舊五代史  原輯永樂大典有注本,吳興劉氏嘉業堂刻。
五代史記  宋慶元刊本,江安傅氏雙鑑樓藏。
宋史  元至正刊本,北平國立圖書館藏,闕卷以明成化刊本配補。
遼史  元至正刊本。
金史  元至正刊本,北平國立圖書館藏,闕卷以涵芬樓藏元覆本配補。
元史  明洪武刊本,北平國立圖書館及自藏。
明史  清乾隆武英殿原刊本,附王頌蔚編集考證攟逸。

上開(じょうかい)*版本の搜求(そうきゅう)*補綴(ほてつ、ほてい)*は,彼の時に在りて實に已(すで)に最大の能事(のうじ)*を盡(つ)くす。惟(ただ)今者(=今)善本の時として發見有りて,此の前に業已(すで)*に失傳と認爲*せしは,漸(ようや)く一隅に集むるも,尤(もっと)も中央圖書館及び故宮博物院は抗戰期內に在るを以て,故家(こか)*の遺族は,此の前に秘藏して宣(あきらかにせ)ず,因りて播遷(はせん)*し而して割愛(かつあい)*するは少數に在らず;盡量(じんりょう)*收購(しゅうこう)*し,盟邦(めいほう)*に寄存(きそん)*して,以て安全を策す。近年悉數(しっすう)*運回(うんかい)*し,臺灣をして善本の總滙(そうわい)*と成爲*さ使む。百衲本『後漢書』は原(もと)本館の前涵芬樓の所藏せし宋紹興本の影印に據るも,北平圖書館及び日本の靜嘉堂文庫殘本を以て益して之を配備し,當時は人間(じんかん)*の瑰寶(かいほう)*と稱するに堪(た)へ;且(か)つ志(こころざし)は眞の存するに在るも,對(こた)ふるに其の中にて未だ完善を盡(つ)くさざるの處の一は仍(なほ)其の舊なりと。然るに故宮博物院近藏の宋福唐郡庠覆景祐監刊元代修補本及び中央圖書館所藏錢大昕(せんたいきん)*手跋(しゅばつ)*北宋刊本と宋慶元間建安劉元起刊本は,各(おのおの)其の長處有り。本館の總編輯である楊樹人教授は特に據(よ)るに覆校百衲本原刊を以てし,原影本の修正を計(はか)り因(よ)りて殘本に配補し而致(しかるに)首尾の不貫なるは五處,其の中重複は四處,共に衍文を圈刪(けんさん)*せしは四十二字,脫漏を補足せしは一處,缺文は二字,原板に存留せし墨丁は四十五處,補正は五十二字。另(別)に顯(あき)らかに雕刻の錯誤に屬するは若干の字有りて,亦(また)酌(く)みて改正を爲し,附表に詳見(しょうけん)*し,以て査考(さこう)*に備ふ。是(これ)に於ひて宋刊の原(もと)の面目は,大(おほ)いに舊觀を復すに可と致す。又『前漢書』の原(もと)の景本に闕漏せし目錄の全份(ぜんふん)*は,亦(また)故宮博物院珍藏宋福唐郡庠覆景祐監刊元代修補本に據り十有四頁を補印し,以て全璧(ぜんぺき)*を成す。校書は落葉を掃(は)く如く,愈(ますます)掃きて愈落ち,悉數*掃清するは礙難(がいなん)*にして,然りて一番に心力を多く費やすは,史籍を鑽研(さんけん)する*者に對(こた)へて,一番の裨益(ひえき)*を多(た)とす可(べ)しと定む。今後仍(なほ)當(まさ)に此の精神に本(もと)づき,毎次(まいじ)*重版し,盡量善本を發掘すべく,校補(こうほ)*を以てして加へ、區區(くく)*の意は,當(まさ)に讀者の樂聞(がくぶん)*する所と爲すべく,亦(また)本館の前輩張菊老(張元済)在天の靈を稍(すこ)しく慰むる可く,喜びて其の繼起(けいき)*するに人有る也。

本館の衲史は原(もと)三十二開(さんじゅうにかい)*本を以て連史紙(れんしし)*印製せしも,訂(はか)りて八百二十册と爲し,流行(りゅうこう)*は廣しと雖(いへど)も,以て中經(?)するに多難にして,存する者は多くは無し,臺省は尤(もっと)も缺乏を感じ,各國は亦(また)多く訪購(ほうこう)*し,爰(ここ)に各方の需求に應じ,改訂して十六開(じゅうろくかい)*大本と爲し,二頁を縮印して一面と爲し,字體は縮本四部叢刊初編と較(くら)べて大と爲し,上等なる印書紙を用ひて精印精裝,訂(はか)りて四十一鉅册(きょさつ)*と爲し,以て檢閱に便にして,重版すること數次を經(ふ)。茲(ここ)に普及を謀(はか)らむが爲(ため),再び縮印して二十四開(にじゅうしかい)*本五十八册と爲し,字體は仍(なほ)甚(はなは)だ清晰(せいせき)*,而して售價(しゅうか)*は原印十六開本の半(なか)ばにも及ばず,莘莘(しんしん)*たる學子(がくし)*は,多くは購置の力有りて,誠(まこと)に普及の名に負(そむ)かず。印に付すに日有り,謹しみて概要を述(じゅつ)す。

中華民國六十五年(1976)雙十節*王雲五*識(しる)す


〈附注〉

彙集:分類して集める。
蒐求:集め求める。
彙刻:彙集刊行by漢典。
開雕:版を彫ること。
四庫全書:中国,清の乾隆帝時代に編集された一大叢書。経,史,子,集の4部に分類され,3458種,7万9582巻の大部に上る。乾隆37(1772)年の詔によって同年四庫全書館が開設され,紀いん(きいん)をはじめ数百人の学者が動員されて10年の年月をかけ,同46年に最初の1組が完成した。書庫も開設され,北京の紫禁城内の文淵閣をはじめ,熱河離宮の文津閣,北京郊外の円明園の文源閣,盛京宮城の文源閣の4閣が建てられた。また民間の便をはかるため,揚州に文匯閣,鎮江に文宗閣,杭州に文瀾閣を建てた。しかし太平天国や義和団(→義和団事変)などの戦乱によって失われたものが多い。byブリタニカ国際大百科事典 小項目事典。
裒輯:〘名〙あつめること。あつまること。また、編集、集録すること。※盍簪録(1723か)一「史則自レ後裒集、則要当二従レ碑為一レ正」 〔新唐書‐文芸伝・王維〕by精選版 日本国語大辞典。
旨:天子の命令。
刊布:刻版或排版印行by百度百科。
前輩:自分よりも学問・官位などが先に進んでいる人。先輩。先覚。
佳槧:良い版本。
甫竟:はじめとおわり。
全功:大きな功労。十分なてがら。
一二八之劫:第一次上海事変。1932年(昭和7年)1月28日から3月3日にかけて戦われた中華民国の上海共同租界周辺で起きた日中両軍の衝突である。中国語では「一·二八」事變と呼称される。劫はおびやかされること。
葺印:重ねて印刷すること。
爛然:あざやかで美しいさま。
盈闌:盈はみちる。闌はたけなわ。
溢幅:幅から溢れる。
點畫:文字を形づくる点と線。
鉤勒:中国画で、対象の形態を輪郭線でくくること。また、「鉤勒塡彩(てんさい)」のこと。
繁冗:複雑でわずらわしい・こと(さま)。by三省堂 大辞林 第三版。
董理:正し、おさめる。
梓:印刷すること。
正文:本文。注釈や添え書きに対していう。
錯簡:書物の文章・ページなどが乱れていること。
淆亂:にごり乱れる
衍文:文中に誤って入った無用な文句。
刪盡:削り尽くす。
項背:背中と首筋。
衲史:百衲本二十四史。
訪購:訪れて購入する。
十六開:中国本のサイズ。285×210。by書虫(又は、十六開 194.0×267.0mmとも)。
鉅册:大きな本。
二十四開:中国本のサイズ。210×185。by書虫
三十二開:中国本のサイズ。210×140。by書虫
連史紙:一種珍貴的書法用紙。原產於福建、江西二省。以嫩竹為原料而製成。色白,質細,永無變色、變質之虞。多用於印製貴重的書籍、碑帖、信箋、扇面等。本稱為「連四紙」,後訛稱為「連史紙」。by萌典。
「連史紙」は「蓮泗紙」とも呼ばれ、江西省や福建省を原産地とし、「千年経っても色褪せない」と讃えられるほどの高品質な画仙紙の一つである。歴史書に記載されている内容によると、400年前、客家(漢民族の一つ)の人々が多く暮らす福建省連城県では至る所に製紙工場があったとされている。当該地の製紙工場では、材料の竹繊維に対する天然の漂白技術が受け継がれており、明代及び清代の客家の製紙文化を守り伝えている。生産された画仙紙は「シルクの紙」「民芸国宝」と讃えられている。「連史紙」は、原料の若竹の繊維をアルカリ法で蒸煮しパルプ化し、漂白した紙料液を竹簀の漉桁を使って手作業で抄紙する。72種類あるとされる技法はいずれも精細である。数百年前、連城産の画仙紙は、遠くは日本や東南アジア諸国にも知れ渡るほど名品とされていた。今年8月上旬、福建省連城県にある1897年創立の老舗工場「美玉堂」を訪問、消滅の危機に瀕している「連史紙」の製紙工程を取材させてもらった。「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年8月19日。
流行:広くゆきわたる。
清晰:清く明らか。
售價:売価。
莘莘:多いさま。
學子:学生。生徒。
雙十節:中華民国の建国記念日。
王雲五:王雲五は中華民国の政治家・実業家。商務印書館の総経理として活動するなど、中華民国期における出版業界の重鎮であった。また、国共内戦期に財政部長として金円券政策を実施したことでも知られる。名は之瑞だが、一般には字の雲五で知られる。幼名は日祥。族派名は鴻禎。号は岫廬。筆名は出岫、竜倦飛。祖籍は広東省広州府香山県。by Wikipedia
海宇:天下。国内。
清寧:世の中が平和に治まる。
掇拾:拾い集める。
景印:写真技術で複写すること。
奏進:天子に申し上げること。奏上。奏申。天子に差し上げること。
在事:居官任事by百度百科
圈刪:範囲を削る。
全璧:欠けたところのない玉の意。すべてが備わっていること。完璧。by Goo辞書
校補:ただしおぎなう。
區區:数量がわずかである,少ない,人・事物が取るに足りない,些細な,つまらない。by白水社中国
樂聞:好んで聞くの意か。
裨益:おぎない役立つ。助けとなる。寄与。
毎次:そのたびごとに。そのつど。毎回。毎度。
礙難:不可、不能。
鑽研:深く研究すること。
能事:できること。特にすぐれたこと。
上開:上述。
搜求:探し求める。
補綴:つづりあわせる。
故家:古くから続いている家。古い家筋。旧家。
業已:すでに。
認爲:思う。
播遷:遠地に流浪する。
盡量:力の及ぶ限りできるだけ,なるべく,極力.by白水社中国語辞典
收購:大量に各方面から購入する,買い付ける,(政府が計画的に一定の価格で)買い上げ。
盟邦:同盟国。親しい国。
寄存:一時的に預ける。by白水社中国語辞典
悉數:全数、全部。by教育百科
運回:回運(まわりめぐること)の意か。
總滙:水流が合流する。by白水社中国語辞典
成爲:為す。
瑰寶:宝物,珍貴なもの。by白水社中国語辞典
人間:人の世。世の中。現世。
割愛:惜しいと思いながら手放す。
錢大昕:雍正6年1月7日(1728年2月16日)-嘉慶9年10月20日(1804年11月21日)は、中国清代の考証学者。字は暁徴。号は辛楣、晩年は竹汀居士・潜研老人と号した。太倉州嘉定県の出身。妻は王鳴盛の妹。蘇州の紫陽学院に学び、1751年の乾隆帝南巡にあたり、召試によって挙人を賜り、内閣中書に任用される。1754年に進士となり、翰林院の官を歴任して事府小事まで出世する。その間、郷試の主考官、会試の同考官をたびたび務めた。1775年、広東学政の任にあたるが、父の喪にあって帰郷したまま引退し、没するまでの30年間、鍾山・婁東の書院と紫陽書院に継続して院長を務め、後進を育成した。
手跋:手跋本は書物の巻末に、著者自身が跋を書き込んだ本。by歴史民俗用語辞典。
詳見:詳しくあらわす。
査考:考査。考え調べること。 調査すること。
全份:全体。


〈補考〉

榎一雄『改訂増補版 邪馬台国』19ページに「蜀大字本」についての記載がある。

その後、仁宗の嘉祐年間(1056-63)以後、宋・斉・梁・陳・魏・北斉・周書の七史の校訂が行われ、徽宗の政和年間(1111-18)に至ってそれが完成したが、金の南侵によって首都開封が陥落し(靖康の変、1126-27)、北宋が滅び、七史の校訂本もほとんど失われた。紹興十四年(1144)、四川の転運使井憲孟が戦火を被らなかった四川の各地からこの校訂本を集め、四川の眉山でこれを刊行させ(蜀大字本)、その版本が明の南京の国子監に入り、清朝の嘉慶年間火災に罹って滅びるまで存続したが、三国志には関係ないから詳しくは説かない。
ここに記される「宋・斉・梁・陳・魏・北斉・周書の七史」こそ、「台灣商務印書館 臺四版重印補校百衲本二十四史序」に見える以下の正史に他ならない。則ち、

宋書  宋蜀大字本,北平國立圖書館吳興劉氏嘉業堂藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
南齊書  宋蜀大字本,江安傅氏雙鑑樓藏。
梁書  宋蜀大字本,北平國立圖書館及日本靜嘉堂文庫藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
陳書  宋蜀大字本,北平國立圖書館及日本靜嘉堂文庫藏。
魏書  宋蜀大字本,北平國立圖書館江安傅氏雙鑑樓吳興劉氏嘉業堂及涵芬樓藏。
北齊書  宋蜀大字本,北平國立圖書館藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。
周書  宋蜀大字本,吳縣潘氏范硯樓及自藏,闕卷以涵芬樓藏元明遞修本配補。